これから資産運用を始めようとするとき、
私たちは多くの「常識」や「鉄則」を耳にします。
「分散投資は絶対」
「元本が保証されるなら安心」
「ランキング上位の投資信託を選べば間違いない」
これらは一見すると、
とても理にかなったアドバイスに聞こえます。
しかし、その「常識」を疑うことなく受け入れた瞬間、
知識不足の騙されやすい投資家として
利用される立場に置かれているのかもしれません。
この記事では、
多くの投資初心者が信じてしまいがちな5つの誤解を
分かりやすく解説します。
広く信じられている考え方の裏側にある真実を知ることで、
あなたはより賢明で、自分自身に合った投資判断を
下すことができるようになるはずです。
誤解その1:「分散すればするほど良い」という神話
「卵は1つのカゴに盛るな」という有名な相場格言があります。
これは、もし一つのカゴを落としても、他のカゴの卵は無事であるように、
投資先を一つに絞らず複数に分けることでリスクを低減させる
という分散投資の基本的な考え方を示しています。
確かに、投資先を1社から10社、100社と増やしたり、
株式だけでなく債券にも分けたりすることで、
特定の企業や市場が暴落した際の影響を和らげることができます。
しかし、この分散投資が万能薬というわけではありません。
分散投資の本質はあくまで「リスクを下げること」であり、
リターンを高めることではありません。
実は、分散にはリスクを下げると同時に、
パフォーマンス(運用利回り)も低下させる傾向があるのです。
分散すればするほどリスクは下がりますが、
一方でパフォーマンスは落ちていくものだと考えれば良いです。
つまり、もしあなたが強い確信を持って
「この分野は伸びる」と判断できる場面があるなら、
必ずしも分散が正解とは限りません。
むしろ、あえて集中投資することで、
より大きなリターンを狙える可能性もあります。
資産運用とは、
リスクを抑える「守り」の分散と
リターンを狙う「攻め」の集中の使い分けです。
誤解その2:「元本確保型」なら安全で有利という思い込み
投資初心者の方が、まず安心感を求めて
「元本確保型」の商品を選ぶケースは少なくありません。
しかし、その「安心」という言葉の裏には、
見過ごせない現実が隠されています。
例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)で提供されている
「元本確保型」商品の多くは、
その中身が実質的に「定期預金」です。
そして、その適用金利を見てみると、驚くべきことに
「0.01%」や中には「0.002%」といった水準のものも存在します。
この金利では資産がほとんど増えることはなく、
これを「運用」と呼ぶのは難しいでしょう。
インフレが2%の時代に金利0.01%の元本確保型商品を選ぶことは、
「毎年約1.99%ずつ、あなたのお金の価値を確実に減らします」
という契約にサインするのと同じことです。
「元本が減らない」という安心感は、
実質的な資産価値の目減りと引き換えなのです。
「元本確保」という言葉の響きだけで判断するのではなく、
その商品がもたらす実質的なリターンを
冷静に評価することが重要です。
少なくとも、同じ制度の中でも投資信託など、
より高いリターンが期待できる選択肢を
検討してみる価値は大いにあります。
誤解その3:証券会社の「ランキング上位」は最高の選択肢
投資信託を選ぶ際、
多くの人が参考にするのが
証券会社などが発表する人気ランキングです。
しかし、ランキング上位だからといって、
それがあなたにとって最適な商品であるとは限りません。
なぜなら、ランキングは
あくまで「多くの人が買っている」という事実を示すだけで、
その商品の質を保証するものではないからです。
例えば、ランキング上位の投資信託であっても、
信託報酬(運用管理費用)が「1.5%」のように
非常に高く設定されているケースもあります。
手数料が高い商品は、
その分だけあなたの手元に残るリターンを
削ってしまうことになります。
ランキングを鵜呑みにするのではなく、
以下の3つのポイントを自分自身の目で
必ずチェックする習慣をつけましょう。
- 総資産額
ファンドの体力と人気を示します。
額が小さいファンドは運用が不安定になったり、
最悪の場合、繰上償還(ファンドが強制的に終了)されたりする
リスクがあります。
目安として純資産総額が数十億円以上あるかを確認しましょう。
- 信託報酬
運用にかかるコストです。低ければ低いほど良いと言えます。 - ポートフォリオ
そのファンドが「何に」投資しているかの設計図でランキング上位でも、
自分の投資方針(例えば、先進国中心か、新興国も含むか)と
ズレていては意味がありません。
他人の評価に頼るのではなく、
これらの指標を基に自分自身で良質なファンドを
見極める視点を持つことが成功への第一歩です。
誤解その4:「同じ指数なら、どの投資信託も同じ」という勘違い
S&P500や日経平均株価といった同じ株価指数への連動を目指す
インデックスファンドは「どれを選んでも大差ない」と思われがちですが、
実は商品によって性質が大きく異なる場合があります。
特に注意して比較すべきポイントは、
信託報酬とリスク(ボラティリティ)の2点です。
- 信託報酬
例えばS&P500に連動するファンドの中にも、
手数料が「0.1%を切る」非常に低コストな商品もあれば、
「0.2%以上」かかる比較的高コストな商品も存在します。
このわずかな差が長期的な運用においては
リターンに大きな違いを生み出します。 - リスク
例えば、「iFreeレバレッジS&P500」のように、
名前に「レバレッジ」と付く商品は、
通常の指数の2倍の値動きをするように設計されています。
これは、相場が上昇した際には大きなリターンが期待できる一方で、
下落した際には損失も2倍になるという
ハイリスク・ハイリターンな特性を持っています。
同じ名前の指数に連動するファンドであっても、
必ずその中身(特に手数料とリスク特性)を確認することが
極めて重要です。
誤解その5:日本に住んでいるから「日本株が中心」で良い
地理的な親近感から
日本株に偏る「ホームカントリーバイアス」は
初心者が最も陥りやすい罠の1つです。
しかし、冷静にデータを見れば、
なぜ世界のマネーが米国に集まるのか、
その理由は明らかです。
- 圧倒的な経済規模
世界のGDP(国内総生産)ランキングにおいて、
アメリカはダントツの1位です。
その規模は2025年のデータでは
2位の中国の約1.6倍、4位の日本の約7倍にも達します。
この巨大な経済基盤が株価の安定的な成長を支えています。 - グローバル企業の強さ
その巨大な経済を牽引するのが、
Apple、Microsoft、Amazonといった米国のグローバル企業です。
世界の時価総額ランキングを見れば、その上位を彼らが独占しており、
世界中の市場で圧倒的な競争力を持っていることが分かります。 - 経済を支える人口増加
企業活動を土台で支えるのが人口です。
多くの先進国が少子高齢化に悩む中、
アメリカは移民を受け入れることで人口増加を続けています。
人口が増えれば消費者のパイも増え、
マーケットは拡大し続けます。
これは、超高齢化社会を迎える日本とは対照的な状況です。 - エネルギー自給率の向上
経済の安定性を根底から支えるもう1つの意外な強みがあります。
かつて世界一のエネルギー消費国だったアメリカは、
「シェール革命」によってエネルギー自給率が100%を超えました。
(2025年現在、日本の自給率は約15%)
エネルギーを自給できることは、
経済の安定にとって計り知れない強みです。
これらの事実を踏まえると、
長期的に見ればアメリカ経済の伸び代はまだまだあると言えそうです。
自分のポートフォリオを考える上で、
米国株の重要性を無視することはできないでしょう。
まとめ:これからの資産運用のために
ここまで、投資初心者が陥りがちな5つの誤解について
解説してきました。
「分散投資」「元本確保」「ランキング」といった、
一見すると正しく思える「常識」も、
その裏側を理解し、自分の頭で考えることがいかに重要か、
お分かりいただけたのではないでしょうか。
資産運用の世界に絶対の正解はありませんが、
避けるべき「明らかな間違い」は存在します。
今日、あなたが疑い始めた、
他人の意見や「常識」こそが、
未来の資産を築くための最も重要な第一歩です。
最後に1つ質問です。
この記事を読んで、
あなたがこれまで信じていた投資の「常識」の中で、
まず1つ見直してみたいと思ったものはありましたか?